2025年
ーーー7/1−−− 寝る特技
リンゴ農園のアルバイトの昼休み。早々と昼食を済ませた後、リンゴの木の根元の小さい木陰に銀マットを敷き、横になって昼寝をする。他のメンバーは、車の中に入り、エンジンをかけたまま、つまりおそらくカーエアコンを入れたまま、昼寝をしているようだった。「リンゴの木陰の方が気持ちが良いのに」と私が言うと、カミさんは「そんな事をしたがる人は珍しいわよ」と返した。まともな人間は、農地の地面に転がって寝ることなどしないと言うのである。その主張には賛同しかねたが、その後に続いた「あなたはどこでも寝られるけど、そういう人ばかりじゃないのよ」と言う意見には、思い当たる節があった。
いつでもどこでも寝られるというのは、大学山岳部の頃に身に付いたものだと思う。山の中はもとより、下界でも、駅の構内、バス停、橋の下などを、勝手気ままに寝場所を定めたものであった。もっとも、50年ちかく前の事だから、そういう事が許されたのかも知れないが。
登山シーズンには、夜行列車は大変な混雑だった。その中で、快適に寝る態勢を作ることが必須だった。いち早く寝場所を確保するのが、登山の前の競争だったのである。座席に座ったまま寝る者もいれば、床に転がって寝る者もいたが、床の方が倍率が高かった。座席のシートを勝手に動かして、寝心地の改善を計る輩もいた。中には、網棚に上がって寝る猛者もいた。
そんな夜行列車の中で、先輩から褒められた事があった。「大竹はたいしたものだ。登山靴を履いたまま寝ている」 と。